鳥衝突日本委員会

鳥を追い払う対策

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バードパトロール

鳥衝突は自然と人工物のConflictで,それを防止するために実に多大な努力が払われているのはこれまで見てきた。しかし他のケースと比較して,より難しいのは,鳥が学習能力を持っているということである。人間側では,鳥の習性その他を考慮していろいろな対策を立てるのであるが,鳥側では,こちらの手段を学習して,それをかいくぐるような行動をとるようになるのである。非常に有効な手段であっても,ある期間経つと,有効性が低下してくるのである。

結局,人間が鳥を追い払うという対処法を取らざるをえないのである。

日本のいくつかの空港(千歳,羽田,中部など)で行われているのは,バードパトロールとよばれる方法である。人間が空港内を車で循環監視して鳥の集まりかたなどを調べ,いろいろな手段(主には銃による威嚇)で逐次鳥を追い払うのである。これもかなり大変な作業で,費用もかかる方法だが,現在のところは恐らく一番効果が確認される方法である。

バードパトロールの仕事を紹介する。通常は数人が班を作って車で巡回する。空港敷地の特性から,どの季節,一日の中のいつ頃かといった時間的特性,どの方向にどの種類の鳥が飛来するかなどは,経験的に把握できているので,それに従って,巡回計画を立てる。あるいは,非常に大きな空港では,パイロットや管制官からの報告で鳥の飛来情報を得て,それで出動することもある。費用対効果から一日に3-4回の循環が普通のようである。空砲の打ち方などには,やはり鳥の学習度によっていろいろなノウハウがあるらしい。当然,双眼鏡等で監視していてこそ効果的に追い払うことができるので,それができない夜間は有効ではなく,また費用も莫大になるので,行われていない。

主に人件費であるが,その費用は空港にとっては小さくないコストと思われるが,その効果は抜群で,離着陸回数の多い大きな空港では新たな導入が検討されてもいる。
筆者も新千歳空港で鳥検出法のフィールドワークをしていた際に,その効果が絶大なことを確認している。バードパトロールが巡回して追い払われると,その後はほぼ数時間の間,鳥がまったく空港内から消えてしまった。

 

Falconry

食物連鎖のヒエラルヒーから,鳥にも天敵がいるから,それを使って退治しようというのがファルコンリーと呼ばれる手法である。ファルコンンとは鷹のことで,日本では鷹匠を思い出してもらえば良い。あるいは昔の鷹狩の要領である。これはかなり以前の1960年代にはアメリカでもかなりの多くの空港で行われていたようである。

NASAがSpace shuttleの着陸時における鳥衝突対策としてFalconryを考えたことがあるらしい。シャトルの着陸は回数が非常に少なく限定的だが,通常の航空機よりはるかに高価な機体なので,有効かと考えたらしい。ケネディスペースセンターでのかなり真剣な調査報告が残されているが,それによると,この方法は,単独ではほとんど効果が上がらない。鳥の種類によっては,鷹は天敵ではないので,知らんふりされるらしい。何しろ相手の鳥の数が非常に多いので,数羽の鷹では手に負えないようだ。鷹よりも大型の鳥に対しては,まったく相手にされない。結局,NASAもこの方法を使うのはあきらめたようだ。

音あるいは超音波

バードパトロールの空砲による方法は結局は音で威嚇していることになるので,銃以外の方法で音を発射して退治しようということも試されている。いろいろな種類の音を試されたようだが,音は公害の一種であるから,むやみやたらと音を鳴らずこともできないので,結局は鳥をいかに検出するかということにかかっているようである。 そこで人間には聞こえない超音波を使う方法もためされたようだが,これは効き目がないことが分かっている。おそらく鳥に聞こえる音の周波数というのはほぼ人間が感知できる音の周波数とそれほど違わないからなのであろう。

結局はなんらかの方法で賭殺することで,おかしな言い方だが,見せしめにして鳥に学習してもらうしかない。(筆者は,銃での威嚇も同様で,空砲だけでは効き目が薄れるのではないか,時々は実包を発射しているのではないかと推察している。)そのために,過去には,いくつかの化学薬品なども使われたようだが,人間に対する安全性の問題もあって,近年ではあまり使われていないようだ。というわけでバードパトロールの有効性がのこり,またその重要性が再認識されているのである。

一方では鳥の検出の自動化が図られており,それと連動した形の駆逐方法の開発も重要なテーマではあろう。

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