鳥衝突日本委員会

鳥レーダーとは?

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電磁波が物体と衝突して反射してくることを利用したレーダーは、航空機の検出のために第二次世界大戦中に開発されて大いに利用され、発展もしてきた。太陽光や天候に左右されにくいことから、航空機以外にも各種物体の検出に利用されている。その代表的なものは気象レーダであるが、他の一つはマリンレーダーで、海洋上の船舶を検出することを目的として開発されている。一般にその検出範囲は、航空機の場合には数十キロメートルから数百キロメートルであるが、海洋レーダは数キロメートル前後である。これを利用して鳥の検出を行うことを目的として開発が進められている。そして最近、鳥検出を目的とした鳥レーダが世界のいくつかの空港で利用され始めている。

レーダはマイクロ波をビームとして発射し、戻ってくる反射波を検出する。それまでの時間を測定すれば、エコーの原理で、どこで(どの距離で)反射したかを知ることができる。レーダビームは線状であるから、そのビームをアンテナを回転させてスキャンすることで、空中のどの位置に物体がいるかを検出することができるのである。多くの読者は、空港や大型船舶、軍船等で大型・小型のパラボラアンテナがくるくる回転しているのを見たことがあるだろう。

このレーダを使って鳥の移動を調べることは、鳥類研究者が渡り鳥の研究に使うことをかなり以前より行ってきていて、その有用性は確認されていた。しかし、建設・運用のためのコストが大きいために、鳥検出専用のレーダが作られることはなかった。

航空機の鳥衝突に関連した場合、レーダの設置場所からの距離や位置は大型のレーダが持つ性能を確保する必要はなく、それよりは海洋レーダの特性のほうが鳥監視には近い特性であることが確かめられ、その利用が進められている。

これまではレーダの波長としてXバンドと呼ばれる比較的周波数の高い、すなわち波長の短いレーダが用いられていた。このレーダは検出精度が比較的良いことで、航空機用、特に軍用として開発が進められ、使用されてきたものである。しかし鳥衝突用として使用すると、いわゆるクラッタノイズという地上付近の物体による異常反射ノイズが非常に強く妨害信号となり、検出精度を低下させていた。また波長が短いために、一定の出力では到達距離が短く、必要な距離を確保しようとすると、より大出力が必要となってコストも高く、クラッターノイズも増加するというジレンマがあった。そこで、軍用としてより有効性が確認されていたSバンドを使用したレーダを鳥衝突レーダとして採択、使用した機械が開発されて販売が開始された。これは波長が長いので、大気による吸収が相対的に少なく、より遠距離まで観測ができることや、クラッタノイズが低減して検出精度が向上し信号処理の負荷が軽くなる。しかし一方では、検出対象物体の最低サイズが大きくなるというHandicapがある。

どのような波長を使っても、レーダ自身は、空間の構造を検出するものであるから、その時間変化から鳥を検出することが必要である。鳥がただそこに居るというのでは検出はできないのである。ただし鳥と飛行機との衝突という視点からのみ考えれば、移動しない鳥は問題とはならないから無視しても良いのかも知れないが。レーダビームアンテナの回転スピード(スキャンの速度)にもよるが、概ね毎秒一枚程度の割合でレーダ画面が更新され、そこから鳥や航空機などの物体の移動を検出する。

アメリカ製の鳥検出レーダ製品も、他のハイテク製品の例にもれず、装置の心臓部でもあるレーダ発信部と受信部のハードウェアは日本製である。(FURUNO電機)受け取った信号を処理解析して鳥として検出したり、その行動監視、記録するなどのソフトウェアが会社独自のものであって、セールスポイントとなっている。

現在アメリカでは、軍用として軍の空港で採用されて運用されている。民生用としてはまだテスト段階で、シアトルタコマ空港、シカゴオヘア空港、ニューヨークJFケネディ空港に試験的に設置され、イリノイ大学との共同研究として試験運用されている。まもなく本格運用される予定である。

日本でも、羽田の第四滑走路の運用開始にむけて設置が準備されている。

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