鳥衝突日本委員会

内田モトキ

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内田モトキという作家がいる。航空エンターテイメント小説作家ということだが,現役のパイロット機長で,指導教官も務めていた。(2006年に亡くなったようだ。)彼のデビュー作「パイロット・イン・コマンド」やエッセイ集「機長からのアナウンス」の中に,鳥衝突の話が出てくる。

それによると,「A社では年間に約400件の衝突があり,エンジンをはずして修理調整を行うのが20回程度で,その損失が10億円」との社内情報が述べられている。具体的に数値をあげてその被害を述べているところが興味深い。これが書かれたのは2000年前後と推察されるが,すでにその頃には,エアラインによってはその被害についての問題認識があり,ある程度の損害額は集計されているのである。

エッセイでは,鳥が機体全面の風防ドームに衝突して,血痕が窓一面を覆って視界を塞いだ話が述べられているし,「パイロット・イン・コマンド」では,鳥衝突が事件の重大な要因となっていて,大きなキーワードになっているのが最後の方で明かされる。ことほどさように,鳥衝突はパイロットにとっては印象的な,やっかいな事のようである。

ちなみに「パイロット・イン・コマンド」のプロローグでそのプロットが出ている。鳥が衝突したかも知れないので,キャビンにいるCAにその気配がないかを問い合わせている。つまり衝突の衝撃や窓から視認,キャビン内に鳥が焼ける臭いがないか,というものである。鳥が焼ける臭いが客室でするのは次の理由による。

高度での飛行中は,大気圧が低くなり,それをカバーするために機内を加圧して常圧とし,乗客の快適さを確保している。そのために,タービンからの高温高圧空気の一部を取り込んで加圧しているのである。したがって,タービンで異臭を発するようなイベントがあれば,客室まで臭いが入り込むことになるのである。

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