鳥衝突日本委員会

近年増えた理由は何ですか?

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09年1月のハドソン河の奇跡で、この問題が大きくクローズアップされて人々の関心を集めていますが、鳥の衝突は最近確かに増加しています。しかしその増加は、関係者の回避努力によって、急激に増加しているというわけではありません。しかし、増加しているのは確かで、その理由を考えてみることにします。

まず一つは、飛行場や飛行機の数そのものと離発着回数が飛躍的に増加しています。
飛行場の数は日本には大小約100ヶ所、アメリカは約2600ヶ所と言われていて、世界的には恐らく1万ヶ所以上ではないかと推測されます。この数の推移はデータ化されていませんが、今後も増え続けるものと思われます。

飛行機の機体数は2010年ごろで約2万機程度と予測されていて、これは10年ほど前の1990年後半から比べても約2倍程度に増加しています。

飛行機が一度フライトする時に、離陸と着陸の2回の飛行が必ず必要で、それぞれのことをMovementと呼んでいます。どちらも滑走路近傍を飛行機の機体が移動するという意味では同じ意味をもっています。このMovementは離陸と着陸が同じ場所とは限らず、しかも国際的にも異なる場所のMovementにカウントされるという特性があります。この回数が、約10年前と比べても数倍増加しています。

一方、鳥の数の増加は機体やMovementの増加以上の割合で増加しています。鳥の種類や場所での増加には異なる特性があるのですが、一般的にはこの10年で指数関数的に増加し、約10倍増加したといわれています。これは自然環境保護活動や保護意識により、野鳥愛好家だけでなく一般の鳥愛好家の人たちが活動に参加したことによるもので、大変望ましいことではあります。

しかし一方では、鳥による各種の被害が増加しているのも確かです。例えば、広場に集まる鳩やカラスが人に危害を加えたり、駅その他の建物内外を糞害を受けたりなど身近なところでも発生していますから、皆さんも経験しているのではないでしょうか。

このような急激な鳥の増加が、鳥衝突の回数を増加させている一大要因となっていることは間違いがありません。特に後述するように、飛行機との衝突で被害が大きくなりやすい鳥類の増加が顕著であることが分かっています。

飛行場と鳥類の関わり方の変化も増加傾向を促進しています。近年の飛行場は都市から離れた自然に近い場所に建設されています。日本では関西空港、神戸空港、中部空港などがその典型で海面を埋め立てた場所に作られていますし、羽田空港や福岡空港、長崎空港などの他の空港でも、海に近い側に拡張が行われています。

そこは鳥にとってのある種のSanctuaryとなっているために、鳥の絶対的な隔離はまったく困難です。新千歳空港や広島空港はほとんど山岳地域ともいえる場所ですし、そこまではいかないまでも、成田空港のように内陸に作らなければ場所がないところでは、当然鳥のほかに哺乳動物も侵入し、衝突の危険がなくなりません。

その他、事故の規模が大きくなってもいると言われています。その理由としては、飛行機のEngineが昔のプロペラ機のころの4台からジェットエンジン2台に減ったために、複数の鳥を吸い込むMultiple Ingestionの問題が大きくなっています。飛行機の機体は、片方のエンジンが停止しても十分飛行には耐えられるように作られていますが、2台に鳥を吸い込んだ場合には、全停止するわけで、推力がゼロになり、墜落してしまう訳です。エンジン4台が全停止する確率よりも圧倒的に大きな確率になっています。

このような事故は、頻度こそ少ないものの、一旦発生すればその被害は非常に大きく、とくに人命が失われる可能性が非常に高いために、問題が大きくなっているのです。一台のエンジンだけでも、複数の鳥を吸込む事故が多発しています。鳥の数の増加とともに、群れの大きさも大きくなっているようです。一度に4羽の鳥を吸込んだり、機体に無数の鳥との衝突があるとか、滑走路に多数の死体が見つかったなどの例が多く報告されているのです。

その他にもそんな事が?と思うことも理由として挙げられています。それは、騒音問題を低減解消するために、エンジンの音が小さく(弱く)なっていて、そのために、鳥が気がつかなくなった、あるいは驚かなくなっているというのです。あるいは、鳥が都会において人間と人間の活動に慣れてきて、あるいは学習してきていて恐れなくなっていて、飛行場を餌場や巣作りに適していると思うようになっているそうです。鳥類学者が言うのですから、確かなのでしょう。

被害の数だけでなく、程度も大きくなってきています。それは、航空機のエンジンその他の各部分の強度が、4ポンド(約2キログラム)の物体の衝突までしか想定していないために、その程度の重量の大型の鳥の衝突によって、エンジンのトラブルや風防への衝突による被害の程度が大きくなっているとも言われている。

その他、実際の増加の証拠ではないのですが、衝突の報告がインターネットでできるようになったために容易になり、報告自体の数が増加しているという見方もあるようです。

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