鳥衝突日本委員会

鳥衝突データベース4 衝突する場所について1

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鳥衝突が発生する場所について考察する。場所とはつまり空間位置のことである。

鳥衝突事象の発生は、圧倒的に空港の近辺が多い。統計によると、衝突の90%が空港内あるいは近辺で発生している。空港とは、その目的や規模によって種類が異なるが、一般的には、陸上交通と空中交通の接点となるところと定義されている。

空港(Airport)という言葉の定義は、一般的に使われる場合には、空港内施設全般を示しているが、航空関連現象について使う場合には、空港あるいは空域(Aerodrome、Airside)という言葉を使う。ここでは、狭い意味でのAerodromeとして空域という言葉を使う。

空域は、駐機位置から離陸してある所定の高度まで達する間の空間と、着陸態勢に入って飛行高度を下げてから着地して駐機場まで移動する間の空間を意味する。これらの場所では、実際に飛行機はほとんどの場合、自動操縦は行われず機長(Pilot)が操縦しているから、飛行機の動線は人間が決めている。一方、鳥もこの空域では自律的に行動していて、動線は鳥が決めている。

鳥衝突に関してICAOでは「空港内」(OnAirport)ということの定義を示している.それによると,着陸時では高さが200フィート以下,離陸上昇時では500フィート以下,地上では駐機中,Taxiingで移動中あるいは離陸・着陸のための地上走行中ということになっている.

 

さて、そこで発生した鳥衝突がどのようなものかを見てみる。

離陸時と着陸時は、平面的にはほとんど同じ平面上の位置を通過するが、高度とスピードは異なっている。さらには、操作(Maneuvering)が違っていて、回避行動への影響が異なっている。前にも見たように、鳥以外の生物との衝突はほとんどが地上で起きていて、いわゆるTaxiingや離着陸走行の状態で発生している。鳥との衝突の場合には、スピードが低いし、恐らく鳥が回避行動をとっているのだろうが、地上での衝突は離陸態勢で進行を開始した時や着陸直後である。いわゆる高度ゼロでの衝突である。

別項にも記したように、空港中心地点(重心位置)から13kimの範囲は鳥衝突の発生を防止する対策を採る地域とされているが、この内側での衝突確率はもちろん非常に高い。近年13kimでは不足だという意見やデータが示されている。

この範囲の高度ゼロでの衝突では、人的被害はさほど大きくはない。ただし、離陸中止になった場合に滑走路内で停止することができずに滑走路や空港敷地からはずれてしまい、立ち木に衝突したり湖沼にはまりこんでしまったりという事故の記録はある。着陸時では減速中ということもあって、大事故の報告はほとんど見当たらない。

次に衝突位置の高さについての統計が図である。(Dolbeerのデータ)

米国FAAのデータベースを使って、1990年から2004年までのあいだの全衝突記録、約5万件を衝突高度の関数としてプロットしたものである。これは非常に滑らかな曲線で近似できると言われ、近似曲線が数値的に求められていて、リスクの定量評価にも使われることがあるデータである。たしかに非常に良くFitしているが、その曲線表示において数値自身が何を意味していてどのような物理量とどう関連しているのか、という考察や考証はまったく行われていない。

そこで、これを工学的視点で解析する。まずプロットの仕方を片対数に変更する。(図2)そこでは曲線が直線状になっていて、見事にライン上に統計点がのっている。しかしそれ以上に、二つの重要なことが見えてくる、一つは、高度1万フィート付近でこの直線がずれていて二本になっていることである。これらの二本の直線はその勾配がほぼ同じであるから、高さによって衝突確率が減少する割合は同じと言えるが、その高度で一旦その減少が停滞するのである。これが何を意味するのか、深く検討されたわけではないが次の二点を指摘しておく。一つはその高度はある種の鳥(ツグミやカモの一部)が飛ぶ高度とされていることと、軍用飛行機の飛行高度がその付近に訓練空域を持っていることが理由と考えられる。

他の一点はデータの限界でもあるかも知れないが、一番低い高度500ft(約150m)でこのラインから上方にはずれて非常に大きな衝突数を示していることである。つまり、この高度以下での衝突が全体の半分以上を占めている。このことは対策を考える上で非常に重要なことのように思える。

しかし以上の考察は必ずしも納得のいくものではないので,筆者自身が元のデータベースにあたってみた.このDolbeerの論文発表の以降もデータベースが蓄積されていて,その数は増えていたが,FAAではその間にデーターベースを整備して完全公表が可能となっている.

そのデータの統計をみて,Dolbeerのものと比較してみると,Dobleerのデータの整理の仕方に大きな問題があることがわかった.それは,数の数え方の問題であるが,鳥衝突の発生高度の幅が一定ではないのである.高度が1000フィート以下では100フィート毎に集計しているのに,それ以上で5000フィートまでの間は1000フィート毎,それ以上では5000フィート毎の合計数となっていたのである.

これをそのままプロットするのは完全な間違いで,カウントする高度幅を一定にした数値をプロットする必要がある.そのようにデータを修正してプロットしたのが図である.このプロットでは,先のDolbeerのプロットとは少々異なった結論が導きだされた.つまり,Dでは5000フィートで直接が二本に分かれていたが,それがなくなり,逆にxxフィートのところで二本になっている.そして数の大小の関係が逆転している.さらには1000フィート以下でも一本の直線上にデータがのり,きれいな関数として減少を示していることがわかった.つまり高度にたいするBSの発生分布は3本の対数直線で表わされるということである.そしてさらに重要なことは,この特性が軍関係のデータとも全く一致するということである.そのことからこの結果の正しさも示されていると考える.

これらの結果がなぜそうなるのかについては,これからもう少し研究が必要ではあるが,ある種のモデルを考える際には重要な特性として利用できるであろう.

 鳥衝突グラフ1

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