鳥衝突日本委員会

裁判になると、どういう判断?

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航空機の事故原因のなかで、鳥衝突によるものであることが技術的に特定できるようになってきている。それに伴って、法律問題や訴訟の数が増えている。空港運営管理者は、鳥を含めて安全性を確保する義務がある。鳥を追い払う、あるいは駆除することは、運営管理の一つの重要な要件となっていて、それを怠って事故が発生した場合には、空港会社が損失を補う必要があるという考えが一般的になりつつある。しかし問題は法律的にもそう単純ではない。

1973年2月26日に米国アトランタの空港でJearjet24便機が離陸時に鳥の群れと衝突してエンジンが停止、墜落して8名が死亡した。この鳥は空港近辺にあったゴミ集積所の餌を求めて集まってきていたものであった。FAAはその直後に、空港周辺での固体廃棄物取扱所に関するガイドラインを作成した。またこの事故は長期の訴訟問題となって、鳥衝突の訴訟についての最初の先例となっている。

また同年12月には英国ノーウィッチ空港で鳥衝突による墜落事故が発生した。幸い軽症者が一人でただけであったが、航空機は2台のエンジンを破損した。このケースの訴訟で裁判官は、空港管理者が安全確保を怠ったことを完全に認める判決を出した。

1989年6月、イタリアのジェノヴァ空港でTNTのBAE146 貨物機が夜間の離陸直後にガンの群れに遭遇して3台のエンジンを損傷したが、機長が空港へ戻ることができた。しかしこのケースを航空会社は告訴して11年間の訴訟期間の後、判決では2億ドルの補償を認めた。その割合は運輸省が50%、30%が航空機の運用会社、20%が空港管理会社であった。

1995年6月に、米国ケネディ空港で、エアフランスのコンコルド機が着陸直前の高度10フィート(3メートル程度)で1羽あるいは2羽のカナダガンをエンジンに吸込み#3エンジン1台が破損。そのエンジンの破片が#4エンジンを破壊して、さらには油圧系統や制御ケーブルを破損した。機長は機体を安全に着陸させたが。滑走路が数時間閉鎖された。コンコルドの損害額は700万ドル。フランス航空局はニューヨーク航空局を提訴して、最終的に530万ドルの補償で決着した。この事故はその後のコンコルド機の運命を決定付けたものだったが、その事故原因は鳥衝突であった。(名称がコンコルドというのも皮肉な話だ.)

問題の複雑さを示す別の具体的な例を示そう。

2003年にセスナ機がドイツの空港に接近中にある種の伝書鳩をエンジンに吸込み、その結果、10500ユーロの被害が発生した。この機の所有者は鳩の所有者に損害賠償を提訴した。所有者が鳩についていた足環から特定されたのである。ハム地裁の決定はかなり画期的なものであった。つまりこの伝書鳩は鳩レースの途中であって、正常の帰巣行動にあったものである。しかもこの伝書鳩には所有者がいて、その人の財産でもあるから、所有者から見れば航空機によってその財産に損害をもたらされたものとも言える。したがって、両者がそれぞれの損害を享受する必要があるから、お互いの補償を認めないという結論であった。

日本での鳥衝突が、風力発電の風車に衝突する貴重な猛禽類であって、その保護のために大掛かりな対策が求められているケースを想起させる裁判ではある。

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